良い獣医師の選び方


人間でもたびたび話題になる良い医者の見分け方ですが、誠実であることは当然の選択肢のひとつではあります。しかし、誠実とは、患者や飼い主に対してである以上に、その「知識」に対して最も必要なことです。

先日ある飼い主さんから、 「犬猫は一週間に一度はシャンプーをしてください。できれば毎日シャンプーをしてください。皮膚病の予防になります。」と言われたのですが・・・というお話を伺いました。

考えてみて欲しいのですが、動物が毎日お風呂に入ることは自然でしょうか。野生動物がシャンプーする姿を見たことがありますか?水浴びや泥浴びをしたり、他の動物に体についた虫を食べてもらったりする姿は自然にあることです。

近年、化学物質アレルギーの存在がやっと周知されるようになってきました。

あらゆる化学物質に体表を晒されることによって起こるもので、体表だけではなく、食物からも化学物質を摂取することによって起こります。

あらゆる生物の身体には、皮膚にも体内にも常在菌というものが存在します。ばい菌と呼ばれるものも当然付着していますし、善玉菌と呼ばれるものも混在しています。

これらが混在して「バランスを取っている状態」が最良です。

犬猫は、よほど悪臭を放ったり、汚れたりしている場合は洗うべきですが、頻繁なシャンプーなど言語道断です。

汚れの程度が低い場合は、温タオルで拭ってあげるだけでも十分ですし、シャンプーを使わずにお湯でよく洗い流してあげ、ひどいところだけシャンプー剤を使い、徹底して成分が残らぬようにゆすいであげましょう。

この獣医師は「犬の汗が皮膚病の原因」とも言っていたようですが、耳を疑います。汗腺は一部にしか存在しません。

そのため、夏場に扇風機を当てても、犬は暑さを飛ばすことができません。人間のように汗腺の汗を飛ばすことによって涼を感じることができないからです。

シャンプーについてはいずれ詳しく述べたいと思いますが、「知識に誠実」とは、例えばこの件に関していえば、毎日のシャンプーで健康を保てている犬のデータを、1件でもいいので示すことができるかどうか、です。そしてその理由、データを正しく飼い主さんに伝えることができるかどうか、です。

指導した理由を説明できる、データを示せる、これが、科学者であり、医師であることの大変重要なポイントです。科学とは再現性があり、立証でき、例外を示すこともできるものです。また、新たな説に関しても誠実に勉強し、検証、立証、反証を行うのが当然の義務です。

一般人には難しいことですが、医師や科学者は、これができることによってその立場を確保することが許される方たちです。

ネットにはとんでもない情報が溢れかえっていますが、鵜呑みにせずに一旦、冷静になって考えてみることをお勧め致します。

特にペットの飼い主さんにとっては、信頼のおけるデータと思われるものに出会えたのなら、それがそのままわが子に当てはまると考えることもNGです。

人間の化粧品も、医薬品も同様であることを考えれば当然のことです。個体差があるため、そのひとに合う、合わないはいくらでもあることです。違和感があったり、何らかの症状が出た場合は、人ならばすぐに対処することができますが、動物は言葉を話しませんから、なんかおかしい、これを利用してから調子が悪い、と言ってくれません。

同様の理由のひとつとして、人間の小児科医が激減もしています。言葉がまだ話せない赤ちゃんを診察することを恐れてしまうようです。

そのため飼い主はなにをすべきかと言えば、とにかく常々、状態を観察することです。素直に先入観を排除して、状態を見て下さい。観察日記をつけることは、近年ではSNSの普及によって容易だと思います。今日のうちの子はこうでした、という、写真入りの立派な記録を残せます。ただし、個人情報が容易に流出し、悪用されるのもSNSの大きなデメリットになることもお忘れなく。閲覧できる人物に制限を掛けることも可能ですし、非公開にして自分だけのデータとして保持することも可能です。

病変が出た時に、その前に何を食べた、何をした、何を使った、どこに行ったかが明白になれば、治療の役にたちます。

観察に重要なことは、感情を排除することです。きわめて冷静に、どうであったかを記録して下さい。

優しい獣医さんだから、という理由ももちろん、患者さんとの相性が良くない場合も多々ありますから、重要な病院選びのポイントであることも確かですが。

こういう治療をします、投薬をします、という時に、遠慮なくなぜそれを使うのか、なぜそうするのか、それを訊ねることができる勇気をぜひ持ってください。実はなかなか聞くことができずに悩まれている飼い主さんが非常に多いのです。

自分は素人だから、へたに聞くことができない、というのが大きな理由のひとつですが、そんなことは当然です。わからないから、プロに聞くのです。それに答えられるのが医師たる者の務めです。ダメなら、迷わずほかの病院を訪ねて下さい。大事なわが子の命に係わる問題ですから、ぜひ勇気をもって下さい。

冷静な観察と、訊ねる勇気を持てる飼い主さんは、おのずと最良の医師を選べる人となります。

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